親知らず、抜いたほうが良いのでしょうか?|足利市の歯科医院
2023年3月31日
こんにちは。歯科医師の大藤です。
先日、私の知人が親知らずの炎症で入院をして抜歯をしました。
前から痛いとのことで相談をされていましたが、抜歯の勇気がなかなか出ず
我慢をして誤魔化していたら、入院をするほど炎症が強くなってしまったようです。
「親知らずで入院?!」と驚く方もいるかもしれません。
インターネットなどでも記事をよく見かけますが、実際親知らずに悩んでいたり
疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、親知らずとはどんな歯で、なぜ痛くなることがあるのか
そして抜いたほうがいいのか、をお話しますね。
親知らずは別名「智歯(ちし)」とも呼ばれ、前から8番目の奥歯(第3大臼歯)です。
全ての人に上下左右4本必ずあるわけではなく
もともとない場合や、とても小さい歯であることもあります。
もちろん正常にまっすぐ生える場合もありますし
顎の骨の中に眠ったまま一生生えてこないこともあります。
問題が起きるのは、顎の骨の一番奥にこの歯の生えるスペースがなく
正しい位置に生えないことです。
傾いたり、横向きに生えたりして7番目の歯に引っ掛かり
歯の一部だけ頭を出すこともあります。
智歯はお口の中で最も後方の、ブラッシングがしにくい場所です。
特に、一部だけ頭の出ている智歯は、他の部分は歯肉で覆われているので
歯と歯肉の間に深くて細い隙間ができてしまいます。
ブラッシングが不十分になると、ここにお口の中の細菌やプラーク(磨き残し)が入り
細菌が繁殖するとその周りに炎症が起きます。これを智歯周囲炎といいます。
〈智歯周囲炎で起こりうる症状〉
・周りの頬や歯茎が腫れる、鈍い痛みがある
・膿のようなにおいがする
・口が開けにくい
・飲み込むときに喉が痛む
・智歯が反対側の歯茎を噛んだり、上下の智歯で頬の粘膜をはさんだりして傷ができる
智歯周囲炎はこのような症状が出ても
多くの場合は1週間ぐらい経つと落ち着いてきます。
しかし、疲れや寝不足で体の免疫力が下がったり
清掃不良で細菌が増えたりしてくると症状が繰り返されます。
炎症が強いと、顔全体、さらには全身の症状まで悪化してしまうことがあります。
お口の周りには、実は扁桃、咽頭などの組織、
および口を開閉する筋肉などが隙間を通じて密に関わりあっています。
智歯周囲炎を放置すると、炎症を引き起こす細菌が歯の周囲に留まらず
周りの組織に波及し、顎の下のリンパ腺や扁桃腺が腫れてきます。
さらにひどくなると顔全体がパンパンに腫れてきたり、
炎症が舌の下、首へと広がり、発熱や痛み、
気道が腫れて圧迫されることによる呼吸困難などの症状を伴う口腔底峰窩織炎(ほうかしきえん)という病気や
細菌が全身に巡って高熱を出す敗血症になることもあります。
こんなことになったら、本当に怖いですよね。
これを予防するには、原因となる智歯を抜くことです。
智歯周囲炎を発症し、急性症状がある時期に抜歯することは望ましくないため
まずは消炎処置が必要になります。
まず、消炎治療の第一は智歯周囲の清潔と安静です。
炎症を起こしている部分を清潔にして消毒し、細菌を減らすための抗生物質や
炎症を抑える鎮痛剤を服用し、体調を整えます。
症状は数日で軽快してくることがほとんどです。
稀に、発熱や炎症がひどい時には、入院して消炎治療を受けなければならないこともあります。
また、まっすぐ生えている智歯は安心、というわけではありません。
磨きにくく、プラークが溜まることで歯周病になるリスクや
知らない間に智歯やその手前の歯に虫歯ができるリスクなどもあります。
いかがでしたか?
これらの予防のために、智歯は症状が出る前に
また何か問題が起きる前に抜歯しておいた方が安心かもしれませんね。
「私の親知らず、大丈夫かな?」と思った方、気になることがある方は
些細なことでも大丈夫です。是非お気軽にご相談ください。